道祖神のちがい(分類)

木造の仏像などは、儀軌によって造形が決められいて、石仏でもあるていど踏襲されています。

道祖神については、神仏のような特別の儀軌があるのではなく、自然発生的に、神といわれながら、僧形や地蔵型になったり、宝珠を持ったり、寺社の石造物と並んでまつられても違和感なく扱われてきました。

道祖神は、地域の特性や信仰の対象の違いから、双体道祖神・単体道祖神・文字碑・石祠・自然石・丸石・陰陽石、他、多様な形態で祀られています。道祖神の分類は、研究者や地域によっても違い、様々であり、統一されていないようです。

伊豆半島と周辺で見られる道祖神・賽の神を、双体・単体・伊豆型・石祠・文字碑・丸石・自然石に分類してみました。

双体道祖神
富士-99-双体

双体道祖神は、一つの石碑に二体の神様が浮彫されている石造物です。

ほとんどの双体道祖神は、立像の姿をとります。双体道祖神は縁結び、夫婦和合、子宝授けの神さまとして、本来の道祖神信仰が変形した性神的 要素を多分に含んで信仰されてきました。

男神と女神が並んでいるのが原則のようですが、どちらに男神と女神が並ぶかは統一されていないようです。着物や持ち物で性別が区別できる場合もありますが、性別を判別することは難しい場合が多いです。

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身延-28-双体・立像・丸彫
箱根-21-双体・坐像・浮彫

双体道祖神の多くは、立像・浮彫の様式で造像されますが、双体であれば、座像や丸彫でも双体道祖神に分類しています。


富士宮-148-双体・平成十六年
沼津-119-双体・令和三年

双体道祖神は人気があり、近年でも造像されることがあります。古い道祖神が壊れた際に、新しくする場合に双体を選ぶこともあるのではと推察します。新しい双体の多くは、在来の像容とは異なり、信州系(実物は見たことがありませんが)の像容を踏襲しているようです。

単体道祖神
沼津-18b-単体・坐像・浮彫

単体道祖神は、一つの石碑に一体の神様が浮彫されている石造物です。

立像と坐像の両方の姿をとります。馬頭観音との判別が難しいこともあります。

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沼津-112b-単体・立像・丸彫
三島-43a-単体・立像・丸彫

単体道祖神の多くは、浮彫(立像と座像)で造像されますが、丸彫・立像の道祖神も単体に分類しています。

伊豆型道祖神
伊豆-54-伊豆型

伊豆型道祖神は、単体道祖神の変形で、坐像が丸彫されている特徴があります。

研究者たちによって、伊豆に見られる道祖神は他の地域の道祖神とは違うことから、”伊豆型”と呼んで区別するようになったようです。石工が伊豆石の石材の特性から生み出したものかもしれません。

伊豆東部と中部を中心に、東は小田原・西は富士市・北は裾野市・南は東伊豆町の範囲に分布しています。

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伊東-6a-伊豆型・頭部が浮彫
伊東-7a-伊豆型・頭部が浮彫

伊豆型道祖神の中に、頭の部分が浮彫のように見える像があります。伊豆型の発生途中の像容なのか、頭が壊れにくいようにした工夫なのかは定かではありませんが、伊豆型に分類しています。


熱海-6-伊豆型・道仏
真鶴-8-伊豆型

熱海市から小田原市西部にかけての海岸沿いの伊豆型道祖神は、僧形(袈裟をまとう)・剃髪しているものが多い。熱海市では、伊豆型道祖神を”道仏”(どうぶつ)と呼んでいる。

石祠道祖神
御殿場-73-石祠

小さな祠を石材で造像しています。

山神・地神・水神・風神・稲荷なども同様の石祠の形をとるので、判別が難しいです。石祠内(や周囲)に石造物(双体・単体・伊豆型・丸石・陰陽石)が置かれたり、[道祖神]と記した木札・紙札・蓋・台座などから道祖神と判断できることもあります。

石祠内を確認できない場合や、空っぽの場合は、郷土資料・先人の判定や土地の人の言い伝えを優先します。

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富士吉田-11-石祠
早川町-7-石祠

山梨県・早川町では、流造の立派な屋根をもった石祠を神殿形道祖神と呼んでいます。身延町・鳴沢村・富士吉田市・富士河口湖町・忍野村にも同様の様式の石祠があります。ここでは石祠道祖神に分類しています。

小田原-236-木祠
小田原-231-石祠

小田原の早川周辺では、稲荷信仰と道祖神信仰が習合して、道祖神が稲荷の祠(石祠・木祠)に祀られています。

文字碑道祖神
御殿場-23-文字碑

自然石や整形した石碑の表面に、[道祖神][猿田彦]などの文字を刻んだ石造物です。摩滅すると判別が難しくなります。

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富士河口湖-8-石祠
富士河口湖-4-文字碑

山梨県に偏在する造形で、整形した石材に[道祖神]などの文字を刻み、唐破風などの立派な屋根を載せているものがあります。石祠と文字碑の区分けが難しいですが、文字と屋根のどちらが主張しているかで、判断しました。左(上)を文字碑、右(下)を石祠としました。


富士宮-350-自然石・オデコ
富士宮-347-文字碑・オデコ

富士宮市の旧芝川町地域に、オデコと呼ばれる自然石の道祖神があります。中には、[道祖神]の文字が刻まれているものもあります。富士川の河原でオデコのような形状をした石を拾ってきたものだそうです。

富士宮市以外では、神奈川県・大井町に一基ありました。

丸石道祖神
裾野-25-丸石

自然石の中でも丸い石を道祖神として祀ることがあります。山梨県に多い信仰形態です。

ひとつの祭壇に複数の丸石が置かれている場合も、一基としました

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伊豆の国-42-陽棒
伊豆-79-陰石

丸石に似た石造物として陽棒(陽石)や陰石があります。子孫繁栄・五穀豊穣を祈る信仰のよりどころとしたものでしょう。陰陽石道祖神として分類しています。

自然石道祖神
富士宮-10-自然石

自然石そのものを道祖神として見立てることがあります。

何も手がかりが無いので、郷土資料・先人の判定や土地の人の言い伝えを優先します。

その他の道祖神
沼津-107-木祠
伊豆の国-60-神社

その他に、木祠・神社・道標などの道祖神もあります。

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松田-24b-道標
函南-26-道標・単体

一つの石材に、道標と道祖神を刻むこともあります。道標を道祖神として祀るところもあります。


東伊豆-13-八尾比丘尼
富士-204-如意輪観音(右脇の石材に[道祖神])

これが道祖神?というものもありますが、地元で道祖神と呼んでいるので、尊重します。

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