道祖神の像容(すがた)

神の形をとる双体道祖神・単体道祖神の像容は様々です。

双体道祖神・単体道祖神・伊豆型道祖神などの像容は、千差万別でどれが典型的な姿であるのかは、誰も知りません。自分の地域やよその地域の既存の道祖神に似せたり、少し変えてみたり、石工によっても、表現方法は違うでしょう。


    立像
    立像

    双体道祖神はほとんどが立像(立ったすがた)をとります。(対象地域では、1030基中の1027基が立像です。)

    単体道祖神でも、立像をとるものがあります。(対象地域では、305基中の172基(56%)が立像です。)

    立像
    坐像

    単体道祖神では、坐像をとるものもあります。(対象地域では、305基中の125基(41%)が坐像です。)

    双体道祖神で、坐像をとるものは、2基ととても珍しいです。

    伊豆型道祖神は坐像をとります。

    丸彫
    丸彫

    主に伊豆型道祖神を表現する場合に、前面だけでなく、背中まで表現する彫り方を、丸彫といいます。

    単体道祖神(立像)の一部には、丸彫されるものもあります。

    浮彫
    浮彫

    伊豆型を除く、単体道祖神や双体道祖神のほとんどは、石碑に前面だけを表現する浮彫が用いられます。

    立像
    刳り抜き

    石碑の前面を内刳した中に、神像を浮き彫りにすることもあります。刳り抜いた形が桃や宝珠のものを宝珠刳と呼びます。舟形に繰り抜かれた舟形刳りもあります。上部中央がへこんでいる花頭窓刳りもあります。

    基壇:直埋・直置
    直埋・直置

    基壇を設けることなく、道祖神の底部を土の中に埋めたり、土の上に置いたりすることもあります。

    基壇:石

    道祖神を大小の自然石や整形した石の上に、置いたり・固定することが一般的のようです。

    基壇:祭壇・祭場
    祭壇・祭場

    コンクリートや石積みで大きな基壇をつくり、単体または複数の石造物をまとめて祀ることもあります。

    基壇:城塁築石壇
    城塁築石壇

    身延町には、石を城壁のように積んだ祭壇が見られます。

    基壇:露岩
    露岩

    大きな露岩(自然石)を祭壇にしているところもあります。

    手のしぐさ:合掌
    合掌

    両手のひらを胸の前で合わせて、拝む姿です。

    手のしぐさ:片手拝み
    片手拝み

    双体道祖神で、内側の手で握手しているので、外側の片手だけで拝むこともあります。

    手のしぐさ:袖中拱手
    袖中拱手

    袖の中で、手を組んでいる姿をしています。

    手のしぐさ:抱肩握手
    抱肩握手

    双体道祖神で、内側の手を相手の肩に回し、外側の手で握手するしぐさです。

    持物:笏

    束帯などの礼服を着ている際に、片手または両手で持つ細長い板を笏と呼びます。上になる手が左か右かは定まっていません。

    持物:中啓
    中啓

    扇の一種で、たたんだ時に先端が半開きになるもの。

    持物:扇子
    扇子

    双体道祖神の女神は檜扇や扇を持つことがあります。

    持物:宝珠
    宝珠

    地蔵菩薩などの仏が持つ頭がとがって、火炎が燃え上がっている形をした玉ですが、道祖神が持つこともあります。

    持物:幣束
    幣束

    神への捧げものである幣束(御幣・幣とも)を持つことがあります。

    持物:帳面
    帳面

    一部の伊豆型道祖神は、帳面を広げて持ちます。

    十二月八日に、目一つ小僧が道祖神に帳面を預けに来ます。その帳面には、災いや悪病を与える人の名前を書いてあるそうです。二月八日に目一つ小僧が帳面を取り戻しに来るのですが、道祖神はどんど焼きで燃やしてしまったと伝え、村人に災難が降りかからないように護ります。

    持物:男根
    男根

    伊豆市北又の伊豆型道祖神が胸の前で抱いている物は男根だと考えられています。とても珍しい道祖神です。

    持物:瓶子
    瓶子

    神にささげる酒を入れる神饌具で、細長く口の細い容器です。

    持物:銚子・盃
    銚子・盃

    もともとは、長い柄のついた金属製や木製で、急須のような形をしています。片口と両口があります。

    持物:提子・盃
    提子・盃

    銚子の酒が足りなくなると酒を加えて補充するのが提子で、初めは銚子の補助的な容器でした。江戸時代前期から「銚子」と呼び、 直接、盃に注ぐようになりました。

    持物:三方
    三方

    左の女神は、神に供える物を載せる三方を持つ珍しいものです。

    頭・髪:剃髪
    剃髪

    地蔵菩薩や僧侶のように、髪の毛を剃った頭をしています。

    頭・髪:垂髪
    垂髪

    長く伸ばした髪を垂らした様子です。

    頭・髪:頭巾・帽
    頭巾・帽

    宗匠頭巾と呼ばれる帽子で、ふちがなく、底が平らです。連歌、俳諧、茶道などの宗匠が、好んでかぶったところから名づけられました。唐頭巾のような物をかぶるものもあります。

    頭・髪:烏帽子
    烏帽子

    烏帽子は成人した男子がかぶる帽子ですが、双体道祖神の場合は、両神ともに被ることもあります。左の双体がかぶっているのが烏帽子と考えられています。

    服装:衣冠束帯
    衣冠束帯

    長い袖の羽織と袴を着けて、堂上人の姿をしています。

    服装:羽織・裁付
    羽織・裁付

    長い袖の羽織に、裁付(もんぺ)を履いていて、田舎人の姿が表現されています。中には、裸足で足の指が表現されているものもあります。脛が見えている像もあります。

    服装:僧衣
    僧衣

    長い袖の布袍の下に、袈裟のような襞の模様が見えます。

    碑型:舟後光碑型
    舟後光碑型

    舟型の形状をした光背をした石碑です。舟形光背とも呼ばれます。中央の先端がとがっているか、出っ張っていることでわかります。

    碑型:櫛形碑型
    櫛形碑型

    石碑の上部が櫛のような丸みを持つものです。

    碑型:兜巾碑型
    兜巾碑型

    修験者が額につける小さな帽子のように、尖った形をしている石碑

    碑型:板碑型
    板碑型

    平らな板の石碑です。上部が三角形になっている石碑は駒形碑と呼ばれることもあります。

    碑型:破風碑型
    破風碑型

    石碑前面の上部に、破風を付けた碑があります。本来は、風や雨水の吹込みを防ぐものですが、石造物の破風は、装飾のひとつと考えられます。破風の頂部に丸みがあるものは、唐破風と呼ばれます。破風の中央に懸魚という火除けの飾りがつくこともあります。

    碑型:打切碑型
    打切碑型

    角柱に切り出した石碑で、方柱碑ともいう。

    碑型:自然石碑型
    自然石碑型

    自然のままに採石した石をそのままか、少しだけ手を加えて整形した石碑です。

    碑型:オデコ碑型
    オデコ碑型

    富士宮市・芝川地区に点在する自然石碑型の特別なものです。富士川河原にある特殊な形状の自然石を、文字碑として利用しています。地元では、オデコと呼んでいます。

    碑型:石祠様碑型
    石祠様碑型

    小さな祠を立体的に造形したものです。中に祀られている神様によって、山神・地神・水神・稲荷や道祖神として祀られています。石祠内に木札・上札を入れて、神様の名前を記すことがあります。道祖神の場合は、石祠内に小さな道祖神や丸石・陰陽石が祀られていることもあります。屋根の形から、切妻造り・流造・唐破風に分かれます。

    碑型:丸彫像
    丸彫像

    伊豆型に似ていますが、立像の姿に丸彫された単体道祖神や双体道祖神もあります。

    石材:安山岩
    安山岩
    火成岩である安山岩は、加工がしやすく、風化しにくいことから、また、伊豆半島では広く分布しているので、石造物の石材としてよく使われます。
    石材:玄武岩
    玄武岩
    火成岩で有色鉱物が多く含まれている玄武岩を産する地域では、玄武岩が使われます。気孔があり、黒っぽい石材です。
    石材:凝灰岩
    凝灰岩
    海底火山の火山灰や軽石が堆積して固まった凝灰岩で造られた石造物は、削りやすい反面、風化しやすい欠点があります。特に海岸近くに祀られている石造物では、塩類風化も加わり摩滅が進みます。

伊豆型道祖神のすがた

    伊豆型
    伊豆型

    伊豆型道祖神は、丸彫された単体の坐像を特徴とする道祖神です。伊豆半島東部を中心にして、神奈川県西部から富士市、裾野から東伊豆町あたりに分布します。手は合掌するか、持物を持ちます。

文字碑道祖神のすがた

    文字碑[道祖神]
    道祖神

    [道祖神]の文字が、楷書・行書・草書・隷書・篆書などで刻まれています。

    文字碑[衜祖神]
    衜祖神

    ”衜”は音読みで”ドウ””トウ”で訓読みは”みち”なので、刻まれている文字は”どうそじん”と読みます。

    文字碑[賽神]
    賽神

    ”賽神”の異名の”賽の神”、”さいの神”と刻まれた文字碑道祖神もあります。

    文字碑[佐倍乃加美]
    佐倍乃加美

    ”賽神”の和名の”佐倍乃加美”と刻まれた珍しい文字碑道祖神です。嘉永四年

    文字碑[猿田彦]
    猿田彦

    瓊瓊杵尊が高天原から降りてきた時に、猿田彦神が先導を務めたとされ、”猿田彦”や”猿田彦大神”の文字を刻んで、道行く人の無事を祈る地域もあります。

    文字碑[道禄善人]
    道禄善人

    道禄神は道祖神の別名らしいが、道禄善人も同様か?この一基しかなく、珍しいモノ。

    文字碑[道尊神]
    道尊神

    道祖神を道尊神というところもあるらしいが、この地域では珍しい。当て字なのか?

    文字碑[題目道祖神]
    題目道祖神

    お題目”南無妙法蓮華経”を髭文字で刻んだ珍しい文字碑です。

毛筆の漢字は大きく分けて篆書、隷書、草書、行書、楷書の5つの書体に分けることができます。この中で最も古い書体が篆書です。その次に生まれたのが篆書を省略した形の隷書です。この隷書から草書と行書、最後に楷書が生まれました。最後に生まれたのが、楷書です。

    文字碑[道祖神]楷書
    楷書

    文字碑道祖神には楷書が多く使用されています。

    文字碑[道祖神]右像・行書
    行書

    文字碑道祖神に使われている例は少ないです。

    文字碑[道祖神]草書
    草書

    文字碑道祖神に使われている例は少ないです。

    文字碑[道祖神]隷書
    隷書

    文字碑道祖神に使われている例は限られています。

    文字碑[衢祖神]篆書
    篆書

    文字碑道祖神に使われている例は限られています。

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